里咲りさ『S!NG』にみる、ぱくりとオマージュの違いについて
あなたは『里咲りさ』というアーティスト、
(アイドル?シンガーソングライター?)を知っているだろうか?
上記MVはその里咲りさが4月3日に公開したものである。
とりあえずみてくれ。やばい。
少なくともわたしはこんな奇抜なMV(楽曲)を他に知らない。
再生回数は現時点(4月5日)で5万回を超えている。
これはほぼ同時期に公開された『NGT48』のMVとほとんど同じペースだ。
注釈を入れると彼女はまったくの無名でインディーズだ。
そればかりかインディーズのレーベルにさえ入っておらず、レーベル事業もすべて個人でやっているという。それなのに、これは異常だ。これはわたしもなにか書かなければならない。
里咲りさの『S!NG』、
このMVがこれだけ拡散をされている原因は2つあるとわたしは考える。
1. 「アイドルとジャンルの関係性の究極系」
AKB48のブーム以降、アイドルがものすごいペースで増産された。
そのなかにはメジャーもインディーズも問わず、個人単位でアイドルを名乗り活動をしているものもいる。
昔はアイドルといえば大人によって作られるものだったと思うが、どうやら今は違うらしい。個人や少人数で(まるで学生がバンドを組むかのように)はじまったアイドルが、メジャーレーベルからデビューをするということも少なくはない。
需要と供給が一致しないほど、日本にはあまりにも多くのアイドルが存在する。
そこで他のアイドルと差をつける動きがはじまった。
最もわかりやすいのが上記の『BABYMETAL』だ。
今や知らないひとは少ないが、彼女らは、アイドルとは無縁と思われていた『メタル』という『ジャンル』を音楽に取り入れることで多くの注目をあつめた。
他にも、
ラップを取り入れた『lyrical school』や、
変拍子と現代音楽を取り入れた『Maison book girl』、
オルタナティヴロックを取り入れた『sora tob sakana』など、
あげればキリがない。
そんななか、里咲りさの『S!NG』というこの曲は、十種類近くものジャンルが一曲に綺麗に混在しているのだ。
実に皮肉めいている。
歌詞からも読み取れるように、彼女にとって歌を届けることさえできればジャンルはどうだっていいのだ。BABYMETALだって、元々はメタルを歌いたかった訳ではないのだ。
彼女のwikipediaをみると、元々はシンガーソングライターとして活動をはじめたらしい。しかし、『これでは売れない』からとアイドルを名乗り、さらに売れるためにとこの曲をつくったのだ。
策士だ。
アイドルとは音楽面にあらわれるものではない。
活動性のみにあらわれるものなのだ。
2. そしてこの『S!NG』、数多くのオマージュ(ぱくり)が散見される。
こここそがこの曲を語る上で最も重要なポイントだろう。
たとえばイントロ、
あきらかに『でんぱ組.inc』の『でんでんぱっしょん』だ。
ここまで似せる必要があったのだろうか?
調べてみると、里咲りさは先月『でんぱ組.inc』のメンバーとイベントでコラボをしたという(しかも里咲りさがセンター!)。
地下アイドルまとめブログ 里咲りささん、でんぱ組と「くちづけキボンヌ」をコラボするまでに成り上がる 「プラムや神楽坂からここまで、、奇跡を見た!」「しかも里咲さんがセンター」
このことからも『でんぱ組.inc』側がこのことを伝えられていないとは思えない。
つまり、『S!NG』のイントロはアイドルというパートを表現するためのオマージュだといえる。
いや、
『ぱくり』とは汚い気持ちで愛がなく、『オマージュ』とは尊敬の気持ちで愛があるものだとわたしは考える。
もしかすると、このイントロは、ジャンルと同じく『売れたい』がために模倣された『ぱくり』なのかも知れない。
なので、『愛』のある箇所がないか、さがしてみた。
すると、こんなものがあった。
@marvys__ これ撮影場所ももしかして...。 pic.twitter.com/Q6ZzS2XK1h
— uzuki(「`uωu)「あやねいろ余韻 (@dempa_uzuki) 2017年4月4日
どうやらMVの撮影スタジオまで同じらしい。
やはり、確実に意識をしている。
おんなじ撮影スタジオをさがし、メジャーでもないのにもかかわらず(しかもイントロのたった少しのために)莫大な使用料を払い(調べてみると使用料だけで50万はかかるらしい。こわっ)、本来ならばそれっぽいスタジオで良かったはずだ、そもそも本来ならばアイドルを表現するのならばAKBあたりが妥当だったはずだ、
あ、『愛』を感じられる気がする。もしかしたら里咲りさはでんぱ組のオタクだったのかも知れない。
なのでわたしのなかではこれはぱくりではなく正しいオマージュだ。
そもそも良くも悪くも賢そうなので下手なぱくりはしないだろう。
他にも、
『S!NG』のなかには、『YUI』っぽい『雰囲気』や『[ALEXANDROS]』っぽい『雰囲気』などを演出している箇所がある。
サビの振り付けもいくつか見覚えがあるし、いってみれば『オマージュ』というより『あるあるネタ』といった方が良さそうな箇所の方が多い。
なにが『ぱくり』でなにが『オマージュ』なのかわからなくなるときがある。
ここ数年でより世間の声が大きかったものだと『オリンピックのロゴ問題』が思い浮かぶが、毎年いくつも世間を騒がせている『ぱくりとオマージュの違いについて』
そのことを議論するにあたって、この『S!NG』という曲ほど適した教材は他にないのではないだろうか。
なによりこれは『エンターテイメント』だ。
わたしはただそれだけでいい。
里咲りさの今年の活躍が、非常に楽しみだ。
geinoutan